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◇ 新田次郎「武田勝頼 (一)陽の巻」

うーん。結論から言えば面白くなかった。

武田氏について、しばらくまとめて読んでいたのよね。関連書を10冊内外。
その中で小説はこれをピックアップした。新田次郎は今まで読んだことないし、
いい機会かなと思って。

読み始めて半分くらいまではけっこう面白く読んでいた。
思ったよりも歴史小説寄りだね。もっとフィクション味が強い作風かと思っていた。
高所からの視点――神の視点で、広い範囲を詳述する。ふーん、調べて書いてるんだなあ。

だが半分も過ぎるとね。くどい気がしてきたのよね。
わたしは「武田勝頼」というタイトルの小説で、武田勝頼のことを読めると思ったから
選んだのであって。それにしては勝頼について分量が少ない。

幼少期なんかは簡単で。初陣の辺りも初陣だった、程度。その後、妻を愛したとか
娘を見初めたとか、信玄死後の相続が上手くいかなかったことは少し詳しくなり、
ようやく勝頼の話が始まるのかと思っていると、武田と織田、徳川の話になっていくのよね。

で、武田家が中心ならまだマシなんだけど、徳川や織田の、それも家康とか信長の話より
その家来や家来の家来の話まで出て来て……
いや、たしかに歴史は細部も面白いよ?面白いけれども、そこまで書いてると
煩雑すぎるの。わたしはそこらへんは関連図書でけっこう読んだから。
もっと勝頼にフォーカスして欲しい。

印象としては、この1冊で勝頼については10分の1くらい。15分の1か。
だんだん不満がつのる。

2つ目の不満は、神の視点のわりに登場人物の心情を書きすぎること。
俯瞰して書いているんだから、「驚いた」とか「思った」とか書かない方がいいのに……
まあ主要な登場人物の心情を書くのはいいとして、前述の通り細かい人物まで出して、
その「思った、驚いた、腹を立てた」まで書くもんだからだんだんオナカいっぱい。
半分過ぎたくらいから飽きて、読むスピードがかなり落ちた。

3つ目の不満は、文章が好きになれない。
意識して採用しているのだろうが、「~であった。だった。なかった」という
語尾を連続させるのが嫌。いっつもこればっかりじゃん!と思うとうんざりしてくる。
まあこれは好みの問題だが。

あと信長の造型がね。近年信長が快男児扱いされるようになったけど、
その前は信長は一般的に残虐無道と思われていて、この作者はその当時の歴史像だから、
その線に沿った造型になるのは仕方ないんだが、今から見ると単純すぎて。
そして細かい登場人物を描くわりに、家康は顔が見えないのよね。
いろいろバランスが悪いと感じる。

……というわけで、全3巻のうち、1巻読んだだけで止めることにする。
がんばって全3巻読もうとしていたんだけど、こんな苦痛を覚えながら読まなくても
いいんじゃないかと我に返った。まあ読む本は他に星の数ほどありますし。
しかしこの見切りを、昨日図書館で借り直してくる前につけられれば良かったなあ。

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